2月の急落後、株価はある程度回復して現在日経平均は22800円あたりで落ち着いています。
アメリカの長期金利も2.96%といったところでしょうか。
そんな中、イタリアの選挙の影響を受けイタリア国債が急落(金利急騰)。
とりあえず再選挙は回避され、混乱は一時的なものとなりましたが、この一連の流れから重要な事が読み取れると個人的には考えています。
それはイタリアの国債急落に見る現在の欧州の金融政策の難しさ、さらにその影響を受けるであろうアメリカの長期金利です。
不安定な欧州の政治動向
3月4日に行われたイタリア総選挙では、与党「民主党」が惨敗し反グローバリズム・EU懐疑派の「五つ星運動」と「同盟」が躍進しました。
しかしどの党も単独で過半数の議席を獲得することはできず、政権樹立のための連立協議が難航します。
この政治的混乱によってイタリア国債が急落し、長期金利は約4年ぶりの水準まで急騰。
その後、連立政権は樹立しましたが金利は依然として高止まりしています。
今回の金利の急騰は政治的な要因によってもたらされましたが、金融政策によっても敏感に反応する可能性が考えられます。
したがってこれからECBにはイタリアやスペインなど、主に南欧諸国の金利に目を配りながら繊細な金融政策が求められ、難しい舵取りになりそうです。
問題はECBが当初の計画通りの金融政策を実行できるのかという事でしょう。
ECBの金融政策
ユーロ圏の中央銀行であるECBの金融政策はここにきて大きな転換点を迎えようとしています。
リーマンショック以降、景気低迷を打破するためFRBやECB、遅れて日銀が量的緩和を実施してきました。
量的緩和とは中央銀行が国債などを買い取り、大量の資金を世の中に流すことで景気を刺激する政策です。
その後景気は持ち直し、まずはアメリカのFRBが2014年から緩和縮小(テーパリング)を開始します。
テーパリングとは量的緩和によって大量に買い取っていた国債などの買い取る量を減らしていくということです。
テーパリングによって世の中に流れ込むお金の量が減ることになります。
さらにFRBは利上げとバランスシートの縮小を開始します。
これはテーパリングよりももっと踏み込んだ金融引き締め策となります。
世の中のお金の量をさらに減らし、物価の上昇を抑え、景気の過熱を防ごうとする政策です。
FRBのこうした動きに対して、日銀もECBもこれまで量的緩和を継続してきました。
しかし昨年ついにECBもテーパリングを開始することを表明。
現時点では今年の9月以降に開始される可能性が高いと見られています。
ECBのテーパリングの不安要素
ECBがテーパリングを開始する上で、いくつかの不安要素があります。
先程も述べたようにテーパリングとは量的緩和によって景気が回復を見せた場合に、徐々に緩和を縮小していくというものです。
確かにドイツの景気は好調なようですが、ユーロ圏内にはイタリア、ギリシャ、スペインのような景気の低迷が続く国もあります。
量的緩和によって現状を維持していたこれらの国々は、テーパリングが開始されたらどうなるか?
おそらく今回の政治的な混乱以上に金利の上昇を招く可能性があります。
金利の急騰によって景気の悪化や債務の問題が深刻になるかもしれません。
さらにユーロ圏の金利上昇はアメリカの長期金利にも影響を与えます。
これまでの利上げにもかかわらず、アメリカの長期金利がそれほど上がらないのは、日本や欧州の金融緩和によって金利が低く抑えられていたという側面があります。
ここでECBがテーパリングを開始すれば、アメリカの長期金利への上昇圧力となるでしょう。
現在、利上げとバランスシート縮小という強力な金融引き締めを実行中のアメリカにさらなる金利上昇圧力が加わると、世界経済への影響も非常に大きなものになると個人的には考えています。
一方でECBが金利の上昇を警戒し、仮にテーパリングを延期するなどのブレーキをかけた場合、引き続きアメリカの長期金利も低く抑えられる可能性があります。
しかしそうなると、度重なる利上げによって上昇を続ける短期金利との金利差(長短スプレッド)がさらに縮小され、場合によっては逆イールドの可能性も懸念されます。
逆イールドについては以前の記事(イールドカーブで株価のピークを予測する)で書いたとおりです。
どちらにしてもこれからのECBが行う金融政策は、繊細な判断が必要であると言えるでしょう。
まとめ
そもそも各国の経済格差が大きい中で、統一通貨を使い、統一した金融政策を行うこと自体にやはり限界があるのではないでしょうか?
これはEU離脱などの反グローバリズムの流れにも繋がっています。
ECBの金融政策によってさらなる景気の悪化を招いた場合、今回とは比べ物にならないくらいの政治的な混乱に発展する可能性があります。
アメリカの長期金利に影響を及ぼせば世界経済にも影響を与えます。
ヨーロッパは今、政治・経済において非常に重要な局面を迎えていると言えるでしょう。