フランス大統領選挙と株価への影響

以前の記事(ダウ平均2万ドル越え!2017年に警戒したいアメリカの不動産バブル)で金利が株式市場や不動産価格に与える影響について書きました。今回は政治的なリスクが株式市場に与える影響について考えてみたいと思います。

 

2017年の主なヨーロッパの選挙

昨年はイギリスのEU離脱やトランプ大統領誕生が大きな政治的なポイントになりました。今年は間違いなくヨーロッパの選挙が政治的なポイントになるでしょう。

その中でも特にフランスとドイツの選挙はとても重要な意味を持ちます。まず、今年のヨーロッパの主な選挙のスケジュールをざっと確認します。

3月 オランダ総選挙
4月~5月 フランス大統領選挙
6月 フランス国民議会選挙
8月~10月 ドイツ連邦議会選挙

 

これらの選挙には共通のテーマがあります。それは「グローバリズムvs反グローバリズム」です。そしてこれは昨年のイギリスのEU離脱とアメリカのトランプ政権誕生と根本的には共通のテーマです。

3月のオランダ総選挙もなかなか興味深いですが、今回は4月のフランス大統領選挙を中心に考えていきたいと思います。

 

フランス大統領選挙のしくみ

フランス大統領選挙のしくみは2回投票制です。第1回の投票で過半数を獲得した人が大統領に選出されますが誰も過半数に届かなかった場合、第1回投票の上位2名で決選投票を行います。

2017年は第1回投票日が4月23日で、第2回投票日は5月7日に行われます。

 

主な候補者と現状

フランスは長らく共和党と社会党が交代して政権を担う二大政党制でした。しかし、今回その二大政党以外の勢力から大統領が選出されるかもしれないということで非常に注目を集めています。

では主な候補者を見ていきましょう。

  • ブノワ・アモン(二大政党の1つ社会党)
  • フランソワ・フィヨン(二大政党の1つ共和党)
  • マリーヌ・ルペン(第三の勢力、国民戦線)
  • エマニュエル・マクロン(無所属)

まず現在の与党でありオランド現大統領が所属する社会党の候補者のアモン氏ですが、支持率は低迷しています。現政権を担っている社会党とオランド大統領に対するフランス国民の不満がとても根強く、その影響がアモン氏の不人気に繋がっているとみられています。

そして二大政党のもう1つの党である共和党の候補はフィヨン氏です。フィヨン氏は当初、最有力候補でしたが妻に対して多額の不正給与を支払っていた疑惑を報じられ、こちらも支持率が低下しています。(参照:ロイター

この二大政党の候補の支持率が低迷する中、急速に支持を集めて来ているのが無所属のマクロン氏でした。しかし最近、同性愛者との不倫疑惑というスキャンダルが報じられました。(参照:ロイター)フランスにおいて同性愛者との不倫疑惑がどれほどのダメージになるのか僕にはわかりませんが、少なくとも保守派の票は入りにくくなるかもしれません。

これら三候補とは決定的に違う政策を打ち出しているのが、国民戦線のルペン候補です。その主な政策とはEU離脱と移民の制限です。それ以外にも自由貿易協定交渉の破棄や公共事業による内需拡大など、アメリカのトランプ大統領と非常に近い政策を掲げています。度重なるテロに対する不安や移民に雇用を奪われると感じている人々から多くの支持を集め、現在支持率ではトップにいます。間違いなく今回のフランス大統領選挙で最も注目すべき人物です。

 

勝敗の行方

これは当然ですがわかりません(笑)現時点では支持率トップのルペン氏が第1回選挙では1位で通過するとみられています。

しかし先述したように、フランスの大統領選挙は2回投票制です。1回目の選挙で1位だったとしても、第2回選挙ではルペン氏には入れたくない人達の票がもう一人の候補(おそらくはマクロン氏だと思われる)にまとまるだろうというのが大方の予想です。そうなるとルペン氏は落選するだろうと言われています。

ただ、第2回選挙でルペン氏の相手となるであろうマクロン氏もフィヨン氏もスキャンダルで揺れているので、反ルペン票がどう動くのか微妙になってきています。当初よりもルペン氏に流れが来ているように感じますが、この状況での予測は非常に難しいと言わざるをえません。

 

株式市場に与える影響

株式市場に与える影響ですが、昨年のイギリスのEU離脱のようにかなりの影響がでると考えられます。

共通通貨ユーロを採用せずにポンドを堅持し、特例的にEUとは一定の距離をとっていたイギリスの離脱でさえ世界にあれだけの激震が走りました。これに対しフランスはドイツと共に最も重要な役割を担ってきたまさにEUの中心です。

仮にルペン氏が当選した場合、EUからの離脱(国民投票の実施)を宣言しているため他のEU加盟国への影響も含めて、イギリスの離脱以上の衝撃を与えると思います。

ただ昨年の例もあるので、ある程度リスクは織り込まれることも考えられます。したがって選挙前から警戒感が広がってじわじわと下落していくんじゃないかと個人的には思っています。

反対にマクロン氏などのルペン氏以外の候補者が当選した場合は、安心感から一時的に上昇するかもしれませんが、あまり大きな動きにはならないと考えています。

 

まとめ

第2回選挙では反ルペンの票がマクロン氏にまとまり、ルペン氏が敗北するというのが現時点での大方の予想です。しかし昨年のイギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領誕生で、大方の予想など当てにならないということを世界中が認識しています。

これからのヨーロッパの選挙はグローバリズムvs反グローバリズムの戦いであると書きましたが、世界的な流れとしては行き過ぎたグローバリズムは終わりに近づいていると感じています。にもかかわらず、日本のマスコミは未だにグローバリズムが正義で反グローバリズムは悪であるかのような報道の仕方をしていて笑ってしまいます(笑)

彼らはなぜイギリス人がEU離脱を選択しアメリカ人がトランプを選んだか根本的な理由を理解できないでしょう。トランプの悪口ばかり報道してるヒマがあったら、国際情勢の基礎くらいもう少し学んだほうが良いですよ(笑)このあたりについてはまた別の記事で書きたいと思っています。

話が逸れましたが、今回の選挙結果によってはEU崩壊が早まる可能性があります。仮にルペン氏が負けたとしても、6月にフランス国民議会選挙があるので国民戦線が議席を伸ばし与党になることも考えられます。そうなると秋のドイツ連邦議会選挙、来年のイタリア総選挙に大きな影響を与えることは必至です。

どのような結果になるかは現時点ではわかりませんが、今年のヨーロッパの政治動向からは目が離せません。

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