3月15日にオランダで総選挙が行われました。
以前の記事(オランダ総選挙はフランス大統領選挙とEU離脱の前哨戦?)でも取り上げたように、選挙前の大方の予想ではウィルダース氏率いるEU離脱派の極右政党である自由党(PVV)が第1党になると思われていました。
ところが結果は、現時点で自由党が20議席にとどまり、ルッテ首相率いる現在の与党である自由民主国民党(VVD)が33議席を獲得し、第1党の座を守りました。(参照:ロイター)
伸び悩んだ自由党
正直、ちょっと意外な結果でした。大方の予想では自由党が第1党に躍り出るのは確実とみられていましたし、このブログでもそのように書いていました。これまでの経緯や現政権に対するオランダ国民の不満を考えれば妥当だと思ったからです。
自由党が伸び悩んだ大きな理由は、ロイターの記事にもありますが直前に起こったトルコとの問題で与党の自民党が毅然とした態度をとったことだと思います。
トルコとの問題とは、トルコの閣僚がオランダ国内のトルコ系住民に向けての政治集会を行うため入国をしようとしたところ、入国を拒否されたという問題です。そもそもトルコの現役閣僚がオランダで政治集会を行おうとすること自体が日本人の僕としてはびっくりですけど(笑)
入国を拒否した理由としてオランダ政府は治安の悪化を防ぐためと説明しているようですが、この措置がオランダの右派勢力に対する配慮があったのは間違いないと思います。
これに対しトルコ政府は激怒。とたんに非難の応酬になりました。さらにオランダ国内のトルコ系住民による暴動が発生。オランダ政府はこの暴動に対し、放水などを行い鎮静化させました。
これらの対応により与党の毅然とした姿勢が評価され、急進的な自由党を支持することを躊躇していた層の票を取り込むことができたのではないかと思います。
ただ、よく考えてみると自由民主労働党は第1党の座を死守したものの議席数自体は前回から減らしており、はっきりと勝利したとも言いきれないところがあります。一方で自由党は事前の世論調査の数字がかなり高かったので完敗したイメージにはなりますが、議席数は増やしているので、こちらも敗北したとも言いきれないです。
なんとも評価の難しい選挙結果ですね(笑)
ただ重要なことは右派勢力の動向を無視して政権運営することが極めて難しくなっているという事実です。仮にトルコとの問題に対して政府が毅然とした対応をとっていなければ、弱腰とみられ自由党がもっと議席を伸ばしていたかもしれません。
以前の記事でオランダ総選挙は結果そのものよりも、その影響がどうなるかが大事だというような事を書きました。今回の選挙では確かに極右勢力は思ったほど議席を伸ばせませんでしたが、移民政策やEUに対して不満を持っている人々が政権に与える影響力が強くなっていることを明らかにしたと思います。
欧州各国においてEUの移民政策などのグローバリズムに対して不満が高まっている中で、これはオランダに限った話ではありません。間近に迫ったフランス大統領選挙で現時点でのヨーロッパにおける反グローバリズムの動きがどの程度のものなのか、一定の答えがでると思います。
依然としてルペン氏が大統領になる可能性は低いようですが、どのような結果になるか興味深く注視していきたいと思います。