2017年はトランプ大統領就任、FRBの利上げ継続、フランスの大統領選挙、北朝鮮問題などに象徴されるように政治的にも経済的にも先行きが予測困難な年だと思います。
このような状況で株に投資をする場合、いつも以上にしっかりとチェックしておきたいのが企業の安全性についてです。
なぜなら、超有名企業で人気もあり成長性バツグンと思われている企業も実は経営状態はボロボロで、何かのきっかけで途端に経営が傾くのはよくある話だからです。
そんな悲惨な銘柄に手を出してしまわないように、今回は企業の安全性に関する指標についてしっかり確認してみたいと思います。
財務諸表
企業の安全性をチェックするには財務諸表を確認するのが基本です。財務諸表には以下の3つがあります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
それぞれを簡単に説明すると、貸借対照表はバランスシートとも呼ばれ、企業の財務状況を確認できます。
損益計算書は企業の売り上げや利益の動向を示すものです。
キャッシュフロー計算書は企業の現金の流れを確認できます。これら3つを財務三表と呼びます。
今回は安全性について確認したいので主に貸借対照表とキャッシュフロー計算書を中心に見ていきたいと思います。
ちなみに損益計算書は企業の収益性や成長性を確認するのに便利です。
自己資本比率
安全性を示す指標としてまずは自己資本比率をチェックしておきたいと思います。
自己資本比率とは総資産に占める自己資本(返済不要な資本)の割合を示す指標です。
自己資本比率が高ければ経営の安定性が高いと判断できます。
会社四季報にも載っているので簡単に確認できますが、貸借対照表で確認するには「負債の部」にある「純資産合計(自己資本)」を「資産の部」にある「資産合計(総資本)」で割って100をかけると求めることができます。式にすると以下になります。
自己資本比率=自己資本÷総資本×100
一般的にこの値が40%以上あれば問題ないといわれています。
流動比率
流動比率とは企業の短期間の資金繰りの安全性を示しています。
具体的には1年以内に返済する必要がある負債に対して、1年以内に現金化できる資産をどのくらい持っているかという比率です。式は以下になります。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
貸借対照表の「流動資産合計」、「流動負債合計」をそれぞれ当てはめると求められます。
一般的に200%が理想とされていますが、120~150%くらいが目安と考えていいようです。
固定長期適合率
短期間の企業の安全性を判断する時には上記の流動比率などが用いられますが、長期的な安全性を判断する時は固定長期適合率などが用いられます。
固定長期適合率とは固定資産を自己資本と長期的な負債である固定負債によってどの程度賄われているかを示す指標です。
土地・建物・機械設備などの固定資産は返済が不要である自己資本や、長期的に返済を行う長期借入金などの固定負債によって賄われていれば安全であると言えますが、短期借入金などで賄われている場合は安全性が高いとは言えません。固定長期適合率はその比率を確認できます。
式は以下になります。
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
この値は100%以下が望ましく、日本企業の平均は約80%とされています。
営業キャッシュフロー対有利子負債比率
最後にキャッシュフローの面から見た企業の安全性を判断する指標として営業キャッシュフロー対有利子負債比率を紹介します。
営業キャッシュフローとは企業が本業によって得たキャッシュの量を表しています。
そのキャッシュフローによって企業が有利子負債を返済するのに何年必要かを表したものが営業キャッシュフロー対有利子負債比率です。
有利子負債とは利息の支払いが必要な負債のことをいいます。貸借対照表で見ると負債の部の「短期借入金」、「長期借入金」、「1年内返済予定の長期借入金」、「社債」、「1年内償還予定の社債」の合計と考えていいと思います。計算式は以下になります。
営業キャッシュフロー対有利子負債比率(年)=有利子負債÷営業キャッシュフロー
この値が5~6(年)以下でコンスタントに推移しているのが望ましいです。年々上昇している場合には注意が必要です。
まとめ
以上、企業の安全性を判断する指標として僕なりに使いやすそうなものをまとめてみました。
安全性を判断する指標はこれら以外にもたくさんあります。ただ、安全性ばかりを必要以上に重視することは良いとは言えません。
借金もなく現金もたくさん持っている企業は確かに倒産の危険性は低いですが、利益を伸ばすために必要な投資をしなければ企業としてのこれからの成長はあまり望めません。
無借金で現金を貯め込んでいるがほとんど成長しない会社と、返済可能なレベルの多少の借金はあるがバリバリ成長している会社とどちらの会社の株を買うかは言うまでもなく後者ですよね。
要は何事もバランスが大事だということですね。
そのバランスを測るためにも今回紹介したような指標を使って、いろいろな面から投資判断をしていきたいところです。