最近の記事(再びの原油価格下落の理由と僕の保有銘柄動向 )でも書きましたが、原油価格がじわじわと下落しています。
昨年は一時大きく下落した原油価格ですが、OPECの減産合意などである程度の安定を取り戻しました。
それがここにきてなぜまた下落を始めたのか?現在の状況について確認してみたいと思います。
原油価格の現状
日本ではGW中だった5月4日、原油価格が一時大きく下落しました。
その後サウジアラビアが昨年合意した減産措置を延長する見通しを示し、さらに5月10日発表のアメリカの原油在庫量が大きく減少したことによって、市場に安心感が広がり現在では価格はある程度落ち着いています(参照:ロイター)。
この減産延長によって原油価格はこれから安定に向かうのでしょうか?
個人的にはその見通しはかなり怪しいと感じています。
もちろん、この状況で減産の延長をしないというのは論外だと思いますので延長の決定はするべきだと思います。
しかし、それだけでは問題の根本はなにも変わらないので引き続き不安定な状況が続いていくかもしれません。
では根本的な問題とは何か?についてみていきたいと思います。
原油価格を左右する2つの要因
原油価格を左右する根本的な問題は大まかに次の2つの要因があると思います。
- 世界的な景気低迷による原油の需要不足
- アメリカのシェールオイル企業の増産による供給過剰
1はそのままですね。特にこれまで世界経済の牽引役だった中国が景気低迷によって原油の需要が低下しており、原油の輸入も減少しているようです。
またアメリカも個人消費が決して良いとは言えず、原油在庫量は多少減ったとはいえ依然として高水準のままです。
以前にも書きましたが、期待されたトランプ政権の大規模な公共事業も実行されれば原油の需要としてはとても大きなものになると思うんですが、トランプ大統領の意思は別として議会の承認を得て実行できるかどうかは非常に不透明な状況です。
2は特に重要なポイントだと思います。
昨年、原油の価格が大きく下落した際にアメリカのシェールオイル企業も原油掘削設備の稼動数を減らし、減産を行いました。
しかし、OPECが減産の合意を決めて原油価格が上昇に転じると再び掘削設備の稼動を増加させ増産を始めました。しかも、ここ数年の技術革新によってシェールオイルの生産コストは飛躍的に低下したので、価格競争を仕掛けたサウジアラビアにも十分対抗できるようになりました。
これではいくらOPECが減産の延長を決めても、原油価格が一時的に上昇すればアメリカのシェールオイル企業が増産に動き出すため、原油の供給過剰な状態は継続していくでしょう。結果、また原油価格が不安定になるという展開を繰り返すのではないかと考えられます。
まとめ
以上が現在の原油価格を取り巻く大まかな状況と、OPECが減産延長を決めても安定はしないと思われる理由です。
結局のところ原油の需要を支えていた中国経済が低迷した今、シェール企業の動向も含めてこれからの情勢はアメリカ次第な感はあります。
現在のアメリカは明らかに個人消費が減速しており、さらにFRBの利上げによって自動車や不動産の需要が今後大きく伸びるとは考えにくいです。
まずは今月の25日のOPECの総会でしっかりと減産の延長が決定されるのかということと、日本時間で毎週水曜日の夜に発表されるアメリカの週間原油在庫に注目していきたいと思います。