23日に行われたフランス大統領選挙の第1回投票の結果、マクロン氏とルペン氏の2人が決選投票に進むことになりました。
今回は5月7日に行われる決選投票について書いてみたいと思います。
順当な結果
第1回投票の結果ですが、直前の報道ではかなりの混戦が予想されていました。しかし、蓋を開けてみれば当初の予想通りマクロン氏、ルペン氏という順当な2人が決選投票へ進むことになりました。
確かに選挙自体は4候補が横一線に並び、それなりの接線になりましたが台風の目であったメランション氏も票を伸ばしきれず、順当な結果になりました。各候補の得票率はマクロン氏23.9%、ルペン氏21.4%、フィヨン氏19.9%、メランション氏19.5%でした。
決選投票の行方ですが、常識的に考えてマクロン氏の当選がほぼ確実だとみられています。世論調査によるとマクロン支持は約60%、ルペン支持は約40%となっており、かなりの差があります。
アメリカ大統領選挙の直前の世論調査のように僅差であれば、まさかの展開もあるかもしれませんが、これだけの差があるとマクロン氏の勝利はかたいでしょう。
またフランスの世論調査は第1回投票の結果を正確に当てているので、これもマクロン氏勝利の大きな根拠になると思います。
では、ルペン氏勝利の可能性は全く無いのか?
このブログではあえてそこを考えてみたいと思います。
ルペン氏勝利のシナリオ
ルペン氏、マクロン氏どちらが勝利するにしても第1回投票の2人の得票率自体は拮抗している以上、敗れた他の候補の支持者の票をどれだけ取り込めるかがポイントになるわけです。
敗れたうちの1人、共和党のフィヨン氏はマクロン氏を支持すると表明しました。
ここで確認しておきたいのが今回の選挙は、長く二大政党制を続けてきたフランスにおいて右派の共和党も左派の社会党も決選投票に進めなかったという歴史的な選挙であったということです。
要するに有権者は近年のフランスの政治に不満を募らせ、その政治を行ってきた二大政党にNOを突きつけたと言えるわけです。
NOを突きつけられた二大政党の代表であるフィヨン氏がマクロン氏を支持したところで、変革を望む有権者の票がどれだけ得られるのか疑問です。
ルペン氏がこれを利用して「やはりマクロンは既存の権力側の人間だー!彼では今までと同じだー!」などと徹底的にやれば、なかなか面白いことになるかもしれません。
さらに気になるのはメランション氏を支持していた人達です。
メランション氏はルペン氏と政治的イデオロギーは真逆ですが、掲げている政策は多くの点で似通っています。EU離脱を問う国民投票の実施、NATOからの脱退、反緊縮財政、自由貿易協定の拒否、反グローバリズムなどです。
主なものでもこれだけ似通った政策を掲げたメランション氏の支持者達が全く違う政策を掲げるマクロン氏を支持するとは考えにくいです。
この構図はアメリカ大統領選挙と似ています。トランプ大統領とバーニー・サンダース氏も政治的イデオロギーは違いましたが、掲げていた政策は似ていました。
サンダース氏の支持者はヒラリー・クリントンには投票したくないと考えていた人が多く、ある世論調査によると40%以上がトランプ大統領に投票したようです。このことは彼らが民主党を支持していたわけではなく、サンダース氏の政策を支持していたということを如実に表しています。
フランス大統領選挙でも同じような事が起こっても不思議ではありません。メランション氏本人の意向は別としても、彼の支持者が大量にルペン氏に投票すれば選挙結果に大きな影響を与えると思います。
まとめ
以上、あえてルペン氏勝利の可能性を探ってみました。とは言うものの、現状ではマクロン氏の勝利の可能性が非常に高いと思います。
もうすでに一部メディアの注目は6月のフランス国民議会選挙に向けられています。
フランス国民議会選挙では間違いなく、ルペン氏の国民戦線が議席を伸ばして影響力を強めることになるでしょう。
マクロン氏は大統領に当選するかもしれませんが、議会では少数勢力であり他の勢力と連携せざるを得ません。そう考えると選挙後のフランスの政治も混乱が予想されます。
とにかくまずは、5月7日の決選投票に注目ですね。