3月28日、埼玉スタジアムでW杯アジア最終予選のタイ戦が行われ、日本代表が4-0で勝利しました。
率直に言って非常に残念な試合でした。スコアだけではわからない様々な問題が垣間見えた試合だったと思います。
前回のUAE戦に続き、この試合も詳しく振り返ってみたいと思います。
トップに岡崎、ボランチに高徳
まずはスタメンですが負傷離脱したFWの大迫に代わって岡崎が1トップに入り、今野に代わって酒井高徳がボランチに入りました。それ以外はUAE戦と同じメンバーです。大迫の代わりは岡崎だろうと思っていましたが、高徳のボランチ起用は少し意外でした。
試合は立ち上がりからタイが積極的にプレスをかけてきました。日本はそれをかいくぐり、前半8分に久保のクロスをペナルティエリア内で受けた香川が鮮やかなキックフェイントでDFをかわして先制!さらに前半20分、またも久保のクロスを岡崎が頭で合わせて追加点!その後はタイが何度もチャンスを作り、タイのペースのまま前半が終了。
後半に入ってもタイの積極的な試合運びは変わらず、日本は押し込まれる展開に。しかし、タイが決めきれずにいると後半12分、またまた久保が豪快なシュートをゴール右隅に決め3点目。さらに38分には清武のコーナーキックを吉田が決めて4-0とします。直後に長友が相手にPKを与えてしまいますが、GK川島の好セーブでPKを阻止し、4-0のまま日本が勝利しました。
結果は大勝も試合内容は・・・
この試合を一言で言い表すなら「結果に内容が伴わない試合」と言えると思います。試合全体を通してどちらがより自分達の狙い通りのプレーができたかと言うと、それは間違いなくタイ代表の方でした。タイと日本では選手個人の能力にかなりの差があるので、結果的には日本が勝ちましたが。
とにかく繋ぎのパスがミス連発で、攻撃の形を作れない、相手にボールを奪われても奪い返せない、自陣深くまで侵入されシュートまでもっていかれる、の繰り返しでしたね。
パスミス連発の原因
この試合でとにかく目立ったパスミスの原因はいくつかあると思いますが僕が個人的に1番感じたのは、このパスミスは単純なキックミスや集中力の欠如ではないということです。問題はもっと深くて、要するにパスを出すコースがないということです。
例えばディフェンスラインの吉田や森重がボールを持っている時に、岡崎が相手DFの背後に走り込み、そこにロングフィードを入れるという形はそれなりに効果的だったと思います。しかし、それが抑えられるとディフェンスラインとボランチの間でボールが行き来するだけで、いわゆる縦へのくさびのパスがほとんど入りませんでした。
前回の試合では縦横無尽に動き回る今野とトップの大迫のポストプレーによって縦へのパスがしっかりと入っていた印象があります。縦にボールが入れば両サイドが手薄になるので久保、原口にもボールが渡りやすくなり、酒井宏樹や長友も攻撃参加できるようになり、攻撃に連動性が生まれます。
今回はなかなかそういった場面がなく、パスコースを探しているうちに相手からプレッシャーをかけられてパスミスを連発するという展開になりました。
今野の大活躍で露呈したハリルジャパンの課題
問題だと思うのはこれまで代表に呼ばれていなかった今野が入った時は攻撃の形が作れていたのに対して、彼が離脱して常連組の選手が入ったら攻撃の形が作れなくなったことです。ということは要するに、これまで時間をかけて作ってきたハリルジャパンというチームは攻撃の形が作れないと言われても仕方がないということです。
ここ最近の2試合だけを例に挙げてこのような意見を言うのはかなり極端だというのは十分承知しています。高徳が今回突然ボランチを任されたのも当然考慮しなければならないのもわかっています。
しかし個人的にはハリルジャパン開始当初から攻撃のバリエーションの無さは気になっていました。激しいプレスでボールを奪い、速攻を仕掛ける時は良いのですが、速攻を抑えられると途端にバタバタしだして手詰まりになる印象です。
また各選手の距離感やポジショニングが良くないため、ボールを奪われても奪い返せないことが多く、無理に奪い返そうとしてかわされてピンチを招く場面がよくみられます。これは選手個人の問題と言うよりもチームとしての組織力の問題だと思います。
ハリルホジッチ監督は1対1で負けないことを重視しているようですが、もう少しチーム戦術や組織力の向上に力を入れてほしいところです。そうしなければ、この先日本と同等以上のレベルの個人能力を持つチームとの対戦は非常に厳しくなるでしょう。
まとめ
現実的にはこれから細かい攻撃の形をチーム全体で構築していくのは難しいかもしれません。であるなら、やはり今野のようにチームを動かすことのできる選手を入れるのが1番手っ取り早いと思います。
今野は自分が動くことでチームを動かせる選手ですが、自分がそれほど動かなくても鋭いパスで周りを動かせる選手を入れてもいいと思います。特にこのチームは全盛期の遠藤保仁や中村憲剛のような中盤でゲームをコントロールする選手が極端に少ない気がします。これからもっとレベルの高い相手と対戦した場合、一本調子の攻撃では限界があります。攻撃の緩急をつけたり、チーム全体のバランスを整えられるような選手をぜひとも入れてほしいところです。